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第4話 誓いの鎖

「はぁ……はぁ……はぁ……相変わらず……はぁ……タフね」

 私は竜一の胸の上で荒い息をしていた。二人とも汗だくだ。八月ともなると夜はすこぶる蒸し暑い。そんな中、クーラーを入れずに三戦もすれば水浴びしたようにずぶ濡れになる。

「んん。そうだな」

 竜一は気の無い返事を返してきた。最近の竜一は私とセックスしている時も以前ほど楽しんでいる様子は無い。頻度も減っている。今日なんかは一週間ぶりのセックスだった。以前はほぼ毎日していたのに。竜一と身体の関係を持つようになってから、かれこれもう四か月が過ぎている。恋人同士でも無いのだし、さすがに飽きてきたのかもしれない。それなら願ったり叶ったりだ。捨てるならさっさと捨てて欲しい。私には愛する人が他に居るんだから。

「暑い。離れろよ」

 実に素っ気ない。別にいいけどね。私はシャワーを浴びにベッドを離れた。

刃渡り十センチ以上はある大型のナイフを手に取り、刃に光を当ててみる。肉厚で刃は鋭く反っており、実によく切れそうだ。

「美優、なんか危ない人みたいだよ」

 恋人が後ろから声を掛けてくる。私達は今、登山用品専門店に来ていた。

「これすごいね。このナイフで枝とか切るの?」

「まあね。焚火する時とか枝の大きさ整えたり、あと食材を切ったりかな」

「ふーん。彰くんも持っているの?」

「いや、持ってない。というか、今は持っている人少ないよ。焚火禁止の山とか多いし、食材も調理済みのモノ持っていくからね。使う機会無いんだ」

「そうなんだぁ」

「気に入ったの?」

「うん。なんかカッコいい。この刃の反り具合とか」

「うへっ、怖いな。背中に気を付けようっと」

「あれ? 彰くん、私に刺されるようなことしたの?」

「してないっ、してないよっ。ジョークだっ。目が怖いってっ」

 あれれ。冗談だったのに本当に慌てている。このくらいにしてあげよう。

「それで、欲しいモノあった?」

「あぁ、うん。全部揃ったよ。これで来週の山合宿は大丈夫そうだ」

「よかった。それじゃあご飯食べに行こう。私お腹すいちゃった」

「あ、もうお昼とっくに過ぎているね。時間かかっちゃってごめんね。会計済ませてくるからちょっと待ってて」

 彰くんは商品でいっぱいのカゴを持って、レジに向かって行った。

 来週は一週間も会えないのか。電話もメールも通じないところらしいから、すごく寂しい。今日はたっぷり甘えよう。

 食後のコーヒーを飲みながら、私達は夏休み中に企画している二人きりの旅行について話し合っていた。

「でさっ、この時期だとこのハイキングコースの景色が良いらしいんだよ」

「ふんふん。でもちょっと距離長くない? 私あんまり体力に自信無いよ。大丈夫かな」

「途中で休憩所もあるし、のんびり行けば大丈夫だよ。いざとなったら背負って上げるから」

 あぁ、楽しいなぁ。こうして計画している時が一番楽しいかも。二人でたくさん思い出作りたい。二人きりの旅行は初めてだし、それに……きっと私達はこの旅行で初めて結ばれる。最近は竜一と会うことが減った分、彰くんとたくさん過ごせるようになった。スキンシップも増えている。でもまだ最後の一線を越えて来てはくれない。そんな中、彼から泊り掛けの旅行の提案があった。だから、そういうことなのだろう。それは私も望んでいたこと。ちゃんと受け入れるから、来てね、彰くん。

「じゃあ俺そろそろ行くよ。夕方からサークルのメンバーと合宿の打ち合わせがあるから」

「うん。後でメールするね」

「ああ、俺もする。今日はありがとう。旅行楽しみにしているから」

 微笑みながら背を向け立ち去ろうとする彼に、別れがたい感情が湧き、声を掛けた。

「彰くんっ」

「ん?」

「合宿の前日、会える?」

「んんん……うん。あまり遅くまでは無理だけど、大丈夫だよ」

「ありがと。彰くんのうちに行ってもいい? 渡したいものがあるから」

「いいけど、渡したいものって?」

「それは秘密です」

 私はにっこり笑って人差し指を立てて唇に当てた。

「分かった。何か知らないけど、楽しみにしているよ」

 片手を振りながら、今後こそ彰くんは人ごみの中に消えていった。

 出来たっ。やっと完成した。間に合ってよかった。私は自分の作品をしげしげと確認した。藍色の布地に、表には金色の糸で『旅行安全』の文字、裏には『彰くん 気を付けて 大好き みゆ』と刺繍してある。我ながら上出来だ。自分の名前を漢字で縫い付けるのは諦めてしまったが、これはこれで可愛げがある。ちょっと幼いかな。まあいいや。あとはこの御守りを明日、彰くんに渡せばミッションコンプリートだ。時計を見ると、午後六時を過ぎたあたり。夕飯の食材を買いに行かないと。私は近くのスーパーに向かった。

 買い物が終わり、帰ろうとしたところ、スーパーの駐車場に見覚えのある車が停まっていた。間違いない。竜一の車だ。嫌だな。見つかったら面倒なことになりそうだ。私は気付かれないうちにさっさと帰ろうと思い、なるべく運転席から死角になりそうなところを身を縮めてそろりそろりと歩いた。チラリと車の方を見ると、若い女の子がスーパーの袋を下げて車に近づいている。あの子は確か、夏休みの少し前にサークルに新しく入って来た子だ。可愛い子だなと思っていた。竜一好みの線の細い華奢な子だ。入ってきた頃は屈託ない笑顔が良く似合っていたが、すぐにあまり笑わなくなり、最近はやつれ気味の顔でテニスをしていることも多かった。

 その子が竜一の車の前まで来ると、キョロキョロと周りを見回してから車の中に乗り込んでいった。そしてすぐに車は発進し、私の視界から消えていった。私は一瞬心が軽くなったように感じたが、直ぐに罪悪感に支配された。彼女は間違いなく竜一の毒牙にかかったのだろう。あの表情と最近の様子から、望んで竜一とそうなった訳では無いことは、私には手に取るように分かる。あの子を手に入れたから、最近私はあまり相手にされていなかったに違いない。そしてこのまま竜一があの子に夢中になってくれれば、晴れて私はお役御免となる。そうなれば勿論嬉しいが、あの子には同情せざるを得ない。私の替わりに別の人間を地獄に突き落とすような罪悪感が、その日は眠るまで私を責め続けた。

 翌日の午前中、家でのんびりしているところに竜一から着信があった。眉を顰めつつ、電話に出るといきなり要件を切り出された。

『今からうちに来い。話がある』

「今日は彼と会うから……無理よ」

『いいから来い。すぐ終わる。話だけだ。今日はハメねぇから安心しろ。お前にとっても悪い話じゃない。例のモノを返してやる』

「……ほんとに?」

『ああ。だから来い』

「……分かった」

『よし、一時間以内だ。待たせるなよ?』

電話が切れた。あれが返される。解放されるってこと? きっとそうだ。そうに違いない。嬉しい。もう竜一に抱かれなくて済む。これからはスマホの着信に怯えなくて済む。あぁ、なんて素晴らしいの。耐え切った。あの悪魔の暴力に耐え切ったんだ。私、頑張ったよ彰くん。嬉しさと誇らしさに涙が溢れた。

カーテンを閉め切り、電気の消えた薄暗い部屋で、私は目の前に置かれたDVDに手を伸ばす。ラベルには『初ハメ映像 ミユ』と書かれている。その隣には写真が数十枚とデータチップが置かれていた。写真の内容はサークルの新歓コンパの後に、薬で眠らされた私が竜一にレイプされた時のものだ。挿入時、犯している最中、事を終えて精液を体中にぶちまけられたところまでが克明に記録されていた。膣から血が流れている様子まで撮ってある。マメなことだ。私を四か月間縛り付けていたモノだったが、先ほど竜一から返されたのだ。竜一は電話での約束を守った。けれど……。

『あぁ、気持ちいいっ、お尻気持ちいいっ、イッちゃう。私イッちゃうっ』

『イッちまえっ、おらっ、おらっ、どこでイクか言ってみろっ』

『お尻よっ、お尻でイクわっ、だめっ、たまらないっ、気持ちいいっ』

『そうかよっ、マンコもかき回してやるぜっ』

『あぁっ、あぁっ、おマンコも気持ちいいっ、太いいいいっ、ぃやああああっ、もっとかき回してっ、ぁあああああぁぁっ』

『ひひひっ、肉棒とバイブの二穴攻めはそんなに気に入ったかっ、この豚がっ』

『いいっ、二穴攻めいいですぅぅぅぅっ、おチンチンもっと強くしてっ、アナルの奥まで突いてぇぇええっ』

 竜一と女が激しく絡み合う映像が延々と何時間も流れ続けていた。撮影の場所や内容はバラエティに富んでいる。ある時はアパートの一室でねっとりとセックスし、ある時は旅館の一室で女がアナル調教され、またある時は車の中で延々とお互いの性器を舐め合っていたりと……。現在の画面には、アナルを竜一のペニスで貫かれ、膣にグロテスクな形状のバイブを挿入された女が、涎を垂れ流し淫猥に嬌声を上げている様子が流れていた。

「そろそろいいだろう。見るの飽きてきたわ。最後まで見ようとすると一週間はかかっちまうからな。で、本題だ。お前には今後、知り合いがやってるデリヘルで働いて貰う。もちろん拒否は無しだ。拒否ればどうなるか分かるな? 今見せた映像が無修正裏ビデオとして日本中に配られる。それだけだ。彼氏くんにももちろん全巻セットでプレゼントするよ。あと、そんな女はアナウンサーには絶対選ばれない。とまあそう言う訳だ」

「なっ……んで……終わりじゃ……無かったの? ……もう、私は……我慢しなくて良くなったんじゃ……無かったの?」

「なんだぁ? お前我慢してたのか? ビデオの中のお前はそんな感じじゃないけどなぁ。くははっ。まあ安心しろ。今後俺がお前をハメることは無いだろうよ。ぶっちゃけお前の身体には飽きてきてたしな。こっちは新しい女とハメるので忙しいんだわ。お前も新しいチンコをしゃぶれて嬉しいだろ。今後は色んな男に可愛がって貰えるぜ。しかも金まで貰ってな」

 悪魔が恐ろしいことを言っている。私、助かるはずだったのに。解放されるはずだったのに。なんで? どうして私が身体を売る話になっているの? あれ、おかしいな。これはおかしいな。逃げなきゃ。悪魔から逃げなきゃ。私は目の前のDVDと写真とデータチップをバッグに押し込め、震える足で玄関を飛び出した。

 走る。とにかく走る。少しでも遠くに行かないといけない。あの悪魔に追いつかれてしまう。捕まったらそのまま恐ろしいところに連れ込まれ、二度と生きては出られないに違いない。セミの鳴き声がうるさい。悪魔の所為に違いない。太陽の光が眩しい。悪魔の所為に違いない。アスファルトが熱した鉄板のように熱い。熱い? なんで? あっ、裸足だ。靴を履いていない。きっと悪魔が盗んだんだ。ちくしょうっ。私の苦しみは全て悪魔が仕組んだことだ。怖いよ。悪魔が怖い。関われば関わるほど苦痛が増す。底無しの昏い穴に引きずり込まれる。もう近づいてはいけない。私は足の痛みを無視して走り続けた。途中で何度も転んだ。膝と手を擦り剥いた。血が出ている。でもまだ走れる。とにかく走れ。

「はぁ……はぁ……はぁ……ここまで来れば、もう大丈夫。悪魔はここには来られない。ここなら安全よ……」

私は呼吸を整え、立派なしめ縄が施された神社のご神木を見上げた。ご神木の枝葉の隙間から陽の光がきらきらと挿し込み、神秘的な力が放射されているように感じる。恐怖が薄らぐのを感じた。ここはアパートの近くにある神社の境内の中だ。どこに逃げたら良いか分からず、とりあえず思いつく神聖な場所を目指したら、ここに来ていた。神社の独特な静謐な空気を五感で感じながら、何も考えずに心が落ち着くのをじっと待った。

頭が冷え、心臓も静かにゆっくり鼓動するようになったことを確認すると、私は先ほどの悪魔とのやり取りを思い出す。悪魔は何を言っていた? 私に客の相手をしろと言っていた。身体を売れと言っていた。従わなければ愛する人を奪い、夢を潰すと言っていた。

もう嫌だ。悪魔に従うのは嫌だ。いっそ全部バラしてしまえばいい。きっと清々する。それで私は悪魔の呪縛から逃れられる。彰くんには捨てられるだろう。アナウンサーも無理だ。大学にだって居られない。両親に会わせる顔も無い。誰も私のことを知らない土地に行って、目立たないようにひっそり暮らすしかない。

灰色の人生だけど、悪魔にこれからも苦しめられるよりは、まだましな生き方のような気がする。ああ、なんだがすごく妙案な気がしてきた。静かな灰色の人生が、私の摩耗した心を癒してくれる気がする。

うん、そうしよう。もうこのまま逃げよう。もう、疲れたよ。リタイアしていいよね。そう決めると、ふわふわと心が軽くなった。なんだ簡単なことじゃないか。諦めればよかったんだ。彰くんとアナウンサーに拘ったから、私は苦しむ羽目になったんだ。ほんとバカだなぁ。私がこんなにも苦しむほどの価値なんか無いだろうに。あはははっ。あはははははははっ。バカバカ。私のバカ。さようなら彰くん……バイバイ、アナウンサーのわたし……。

全てを諦めた私は、空っぽになった心で神社を見渡す。あんなところに手水舎がある。よし、まずは身を清めよう。私は手水舎で手を洗い、膝や足についた泥や血を洗い流す。冷たくて気持ちいい。最後に口をすすぎ、そのままごくごくと水を飲んだ。生き返る。新しい人生の門出に相応しい清涼感があるわ。

強めの風が境内を吹き抜けた。からからと木の板が打ち合う音がする。そこにはたくさんの絵馬が掛けられていた。そういえば、大学受験の日、試験前にこの神社に合格祈願に来て、絵馬を奉納したんだった。光り輝く未来を夢見ていた私は、絵馬になんて書いたのだったかしら。私は夢見がちな可愛い妹に将来の夢を聞かされる姉の様な気分で、自分の絵馬を探した。すんなりと自分の絵馬が見つかり、クスクスと笑いながら絵馬に書かれた文字をゆっくりと読んだ。

『一、必ず合格します。一、彰くんとずっと仲良く居られる努力をします。一、絶対にアナウンサーになります。私は私に誓います。どんなに辛くても、苦しくても、決して諦めません。美優』

 過去の私、愛しい愛しい過去の私。真っ直ぐね。覚悟を決めているわね。すごく立派よ。眩しいわ。あなたならきっとなれた。あの悪魔にさえ出会わなければ、きっと誓いは実現したでしょう。あなたの努力を私は知っています。辛くても、苦しくても、耐えて、我慢して、それでも前を向いて頑張っていたあなたを私はよく知っています。あなたの誓いは尊いものです。あなたの歩んできた道は誇って良いものです。それは私が、他の誰でも無い私自身が確信しています。

けれど……だけど……私は、そんなあなたを裏切ったっ。あなたの誓いを、誇りを、人生を放り投げたっ。疲れた? リタイアしたい? 灰色の人生の方がまし?

そんなの許さない。私が許さない。絶対に許すものか。私は誓ったのよ。悪魔ごときに邪魔されてなるものか。私は負けない。諦めない。だから、売ってやる。身体を売ってやるわ。上等よ。男の千や二千、相手してみせるわ。そして必ず、誓いを果たしてみせる。

彰くん、さっきはさよならしちゃってごめん。許してね。私、頑張るから。もう折れたりしないから、だからどうか、私の心が狂わないよう見守っていて下さい……。

「……うん、ごめんね、私から言い出したのに。気を付けて行って来てね。……うん、またね」

 彰くんとの電話を終え、次に悪魔に電話しようとして、深くため息を吐いた。手や足を擦り剥き、服も泥だらけになってしまった私は結局彰くんに御守りを渡しに行くことを諦め、そのまま家に帰ってきた。最後に一目会いたかったけど、こんな傷だらけの姿見せたら絶対心配されるし、問い質される。会えない一週間の間に傷もある程度消えるだろうから、寂しいけど却ってこのタイミングで良かったかも知れない。それよりも、今は悪魔への連絡を早くしないと。私が逃げている間に悪魔からの着信が十件以上あった。メールも来ている。『仕事の話をするから連絡しろ』とだけ書かれていた。私はうだうだとして踏ん切りがつかず、結局電話出来たのは夜の九時を回ってからだった。

『おせぇよ。勝手に居なくなりやがって。何してたんだっ』

「別に……突然だから驚いただけよ」

『ふんっ。しかもいいところで掛けてきやがって……で、やらないなんて言わないよな?』

「どうせ私は拒否なんて出来ないわ。あんなものを勝手に撮っていたなんて。やっぱりあんたはゴミクズよ。それよりも何? またやってんの? 声で気が散るんだけど」

『口の利き方に気を付けろ。俺は今お前の所為でイラついてんだ。うっかりビデオをネットにアップしちまいそうだ。それにハメてる最中に掛けてきたのはお前だ。勝手言ってんじゃねぇ』

「勝手はどっちよ……だいたい、アップなんかしたら私もあんたに従う理由は無くなるわね。清々するかもね」

『ちっ、気の強い女だ。まあいい。今は仕事の話だ。明日、俺と一緒に店に行って貰う。朝九時に俺の部屋まで来い。一日掛かるからそのつもりでいろ。身分証忘れんなよ』

「何? 明日から売春させる気? それに身分証ってなんでよ」

『明日はまあ、研修だな。俺はお前を店に紹介するだけだ。ちゃんと営業しているところだからな。働くのにそういうのも必要なんだ。年齢を確認するためだけだから、いいから持って来い』

「やばいことに使われないでしょうね」

『くははっ、心配するな。俺達の大学の学生も何人か働いているよ。今じゃ稼ぎが良過ぎて抜け出せ無くなっている奴も居るぜ。安心しろ、健全で優良な店だよ』

「……あんたいつもこんな風に女を働かせているの?」

『ひひっ、稼げそうな奴ならな。お前はがっつり稼いでくれそうだぜ。俺がたっぷり調教してやったからな。感謝しろよ?』

「ゲスがっ……刺されて死になさいよっ」

『ふんっ、そんなヘマするかよ。もういい。俺は今忙しいんだ。明日、九時だからな。じゃあな』

 軋む音とともにスマホが私の手の平に食い込んでくる。どこまでもバカにしている。通話中ずっと電話の向こうから聞こえてきた女の嬌声が自分の惨めさをこれでもかと実感させる。脅迫され犯され続けてきたが、飽きればあっさり捨てられ見向きもされない。あいつにとっては女なんて気軽に乗り換えられる車のようなものなのだろう。古い車の最後の仕事は持ち主にお金を残すことだ。あの嬌声の主と、悪魔が乗っている車に奇妙な仲間意識を持つ。哀れな後輩たちに心の中でメッセージを送りたくなった。先に、行くね。

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